化学

頻出!緩衝液の原理を分かりやすく解説

緩衝液という分野は平衡の中でもかなり難しい分野として考えられています。だからこそ、苦手意識強くないですか?

 

かの有名な東京大学ではストレートに「この緩衝液のpHはいくらか?」と聞いてきました。

そんな話を聞くと

 

「クッソ難しそうだな、俺には無理やん」

「これだから化学が嫌いなんだよ」

 

ってめげてしまいそうになります。でも、そうじゃないんです。

実は、緩衝液は公式に代入すれば一発で出てくる問題なのです。その導出がちょっとだけめんどくさいですが、そこを僕が分かりやすく解説します。

 

しかも、公式からそのまま性質まで分かるようになっちゃいます。もう緩衝液で1点も落とすことはないでしょう。

 

そもそも緩衝液とは?

緩衝液とは、多少の濃度変化があっても㏗が変化しにくい溶液のことです。

ちなみに、水を入れても全く変わりません。

 

そんなびっくり溶液どこにあるんだよ?って感じですが実は目の前にあります。

そう、僕らの血液です。

 

生体内の反応ってpHによってだいぶ左右されやすいんですね。だから、炭酸由来の緩衝液にすることでその変化を起こさないようにしています。

 

なんで、そんな性質があるのか?それを今回は紐解きます。

 

公式を導出しよう

ここからは緩衝液の式の導出方法を書いていきます。今回は分かりやすく、酢酸を例にとっていきます。全部で2STEPです。

 

STEP1:電離度を利用した収支計算

 

             
  CH3COOH CH3COO H+  
      0  
  -a   +a   +aA  
  A(1-a)   aA+B   aA  
  a<0.05          

この表の通りに計算します。それぞれの文字の説明をしますね。

 

A=酢酸の濃度

B=酢酸塩の濃度

a=変わった量

 

ここまではよくある平衡の計算ですね。これを平衡定数Kに代入すると

 

K=aA(aA+B)/A(1-a)

ですね。今回の目標は水素イオンの濃度なのでaAです。

 

STEP2:近似を使おう

ここから計算を簡単にさせるために近似を利用します。化学の近似は数学ほどきっちりしてません。

 

足し算と引き算の相方がめっちゃちっちゃければ0にしてよい。

 

これだけです。基準は5%未満かどうかと考えておくと受験ではOKです。

ここで、今回のaって数字に注目しましょう。

 

aって追加でできた酢酸ナトリウムなんですよ。これって、もともとBという酢酸ナトリウムがいてそれにさらに追加されるということです。

つまり、ルシャトリエの原理が効いてきます。そうするとaはめちゃくちゃ小さい値です。

 

ここで近似が使えますaはAとBのどちらよりも小さい値です。なので無視してOKです。そうするとKの式は

K=aAB/A

aA=H+濃度=AK/B

ですね。こんなにシンプルです。なんとpHの水素イオン濃度は酸とその塩の濃度の割合に平衡定数をかけたものだったのです

 

ここからわかること

もう少し分かりやすくするために、一工夫加えます。今回の体積ってどちらも同じフラスコの中の話なので同じですね。

ということは約分できます

aA=H+濃度=(NA)K/(NB)

Nは物質量を表しています。つまり、

 

pHの水素イオン濃度は酸とその塩の個数の割合に平衡定数をかけたもの

 

です。ここまでくると最初に話した性質が見えてきます。

 

まず、少量のpH変化ですが、これは変わらないですね。分母が増えたら分子は小さくなり、その逆もしかりなのでうまくバランスが取れています。

 

水を入れた場合はもっと顕著です。水は体積を拡張するだけなので、溶質の個数に影響はないです。そりゃ反応しますね。

そういうことです。

 

こんな感じで式から導出できるのです。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。緩衝液ってこんなもんですよ。式だけ見ると、分かりやすいですね。

 

ここからは余談です。

サイエンスは再現性をもって語られます。その再現性はこのように数式や論理関係できっちり表されることが重要です。

自分に合うかどうかがサイエンスと述べている人がいましたが、それは明確に間違っているので気を付けましょう。