アルミニウムが水酸化ナトリウムに解ける反応式を書きなさい。
この問題が苦手な人は多いのではないでしょうか?
多くの人が暗記に頼ってるので、細かいところで減点対象になる代表例です。
今回は、水酸化ナトリウムにアルミニウムが解ける理由を原理から解説していきます。
無理な暗記は一切ないので、反応物や係数を間違えることは格段に減りますよ!
アルミニウム錯イオンが難しいと思われる理由
まずは、今回の説明の概略図をここに示します。
初見でこの式を教えたとき、必ずみんな思うはずです。
水どっから出てきたのだろうか。
アルミニウムって水酸化物イオンと錯イオンを作るって教科書に書いてありますし、そこまでは僕らも理解できます。
だとしたら水酸化ナトリウムから水酸化物イオンを借りてくれば済む話であって、わざわざ水は必要ないような気もします。
考えてみれば、無機化学ってこんなのばっかで絶対似てそうな亜鉛の反応は係数が変わるので余計に暗記事項が増えることも…
こんなの覚えられません!僕は暗記が無理だから理系に進学したのだから!!
という人は絶対いると思います。
今日でそんな悩みから解放されましょう。
アルミが解けるのは、ルシャトリエの原理が効いたから
タイトルに結論を書いておきました。
これだけ理解しておけばここから先の話は理解できるはずです。
この反応はルシャトリエの原理がめっちゃ重要です。
どこで効いてくるか、楽しみにしててください。
まず最初に、アルミニウムを水溶液に突っ込むと、ほんの少しだけとけます。
この「ほんの少し」は本当に少しで、この段階では目に見える量ではないです。
さて、水に溶けるとイオンになってぷかぷか周りを浮きます。
イオンは電子を放出することで、電子の量がちょうどいい感じになったものですが、ここで問題が発生します。
電子、だれが受け取るの?
実は受け取り手がいないんです。
電子の世界でも保存則は存在しますから、好き勝手に捨てられません。
ちなみに、電子の受け取りやすさはイオン化傾向で表します。
今回の場合は陽イオンの金属がいたらその金属に渡すわけです。
今反応式にいるものを見ていきましょう。対象は水酸化ナトリウムなのですが、勘のいいひとなら分かると思います。
受け取り拒否です。
ナトリウムイオンってイオン化傾向が非常に大きいです。
イオン化傾向が大きいと電子を受け取ってくれません。
困った、電子受け取ってくれなきゃ水に溶けられないよってなるわけです。
そこで目を付けたのが
水
なんと冒頭で話した水がこんな序盤から活躍します。
水は電離すると水酸化物イオンと水素イオンを出しており、アルミニウムは水素イオンめがけて電子を出すわけです。
ただ、問題があります。
水素イオンもレアキャラなんです。
そもそも液性は塩基性なので水素イオンはそんなたくさん入れません。
水素イオンまでほんの少ししか存在しないので、いくら反応が進むといえど微々たる量です。
ただ、ここで、アルミニウムは気が付きます。
「まてよ、俺ってOHを4つ集めたら錯イオンってめっちゃ安定なイオンになれるやん。それなら喜んでくれるのでは?」
そう考えたわけです。
「水酸化ナトリウムからOHを1つパクって錯イオン作ります。そしたらめっちゃ安定するんで力を貸してくれませんか?」って頼んでみるわけです。
安定化するなら貸してやろうって思うわけです。
その瞬間、歴史が動きます。
溶液の中でアルミニウムイオンが一たび錯イオンになると飛ぶようにOHが消えていくわけです。
ここから、2つの場所でルシャトリエの原理が適応されます。
ルシャトリエの原理とは変化が起こった場合、是正するように働きかける法則
この視点で見てみましょう。
1.水のイオン積
水は水素イオンと水酸化物イオンに分かれますね。
この時、水酸化物イオンだけ爆速でなくなったらどうでしょう?
「やばい、在庫不足だから補充しなければ!」
って形でどんどん水酸化物イオンを作りだします。
そうすると、副生成物で水素イオンが出てきますね!
2.アルミニウムの溶解
錯イオンを作るのは金属です。
ということはアルミニウムイオンも爆速で消えていく上に、水素イオンが副生成物としてたくさん出てきます。
電子の受け取り手も増えて、そのうえでアルミニウムイオンも必要となってくる。どんどんと溶けていくわけです。
ここまでまとめると、金属と水酸化ナトリウムと水から錯イオンと水素ができるわけです。後は係数を付けてあげればよいわけです。
ちなみに、有名な両性金属のがありますね。
例えば、Zn、Sn、Pbがあります。
これらの金属も全く同じことが起こります。
なので、出てくる電子の量だけ変えてあげればOKです。
一個覚えておけば他も応用が効いてしまうのが化学なのです。
まとめ
こんな感じで、無機化学も筋道立てて考えていけば、暗記事項は減るんです。
反応式は基本的に理屈さえ知っていれば再現できるので、これをまずは学びましょう。
色はどうしようもないので覚えるしかないですね。